ソフトウェア研究室

#03 双子のゲーム

ソフトウェアの調査をしていると、奇妙なケースに出くわすことがあります。あるソフトハウスから発売されたソフトと全く同じものが、他社から発売されるという現象です。現在のところ、以下の事例を確認しています。

日本コンピュータ設計サンキ・コンピュータ・システムズ

日本コンピュータ設計から発売されたソフトのうちの5作品が、サンキ・コンピュータ・システムズからも発売されています。といっても、実際に中身を確認したわけではなく、推測に過ぎません。確かに「ハノイの塔」や「バイオリズムと相性診断」というタイトルは偶然同じになったと考えても不思議ではないありふれたものですが、5作品すべてが日本コンピュータ設計の発売分に含まれるとなると、偶然とは考えられません。これらは同作品とみなしていいでしょう。

サンキ・コンピュータ・システムズのラインアップは、『Oh!FM』1985年2月号の広告で見つけました。それによると、価格がすべて半額以下に下げられ(元の価格は日本コンピュータ設計のそれと同じ)、通信販売のみとなっています。

両社の関係はずっと不明だったのですが、その後ある雑誌で、この2社が「日本SEグループ」に属していることが判明しました。この日本SEグループがどのようなグループなのかはよくわかりませんが、両社はやはり無関係ではなかったわけです。

なぜ値下げをして再発売したのかは依然不明なのですが、日本コンピュータ設計作品の在庫を、同じグループ企業であるサンキ・コンピュータ・システムズが販売を請け負ったといったところでしょうか?

セントラル教育スターパック

セントラル教育は「ガキ大将野球拳」など、なかなか個性的なソフトを発売していましたが、リリース作品のうちの「4Dワ-プ」と「スーパーダイス」がスターパックからも発売されています。タイトルがそれぞれ「スペースワープ」、「ウルトラダイス」と変えられていますが、同一の作品であることは確認済みです。

スターパック作品のパッケージを見ると、対応機種に「FM-NEW7/77」の文字がありますが、この2機種が発売されたのは1984年5月ですので、ソフトの発売年月はこれ以降と推測されます。セントラル教育の2作はいずれも1983年発売ですので、スターパックのほうがあとから発売したのはほぼ確実です。

この両社の関係については、全くわかっていません。既発売のソフトのタイトルのみを変えてこっそり発売するという大胆なことは、セントラル教育があまり有名でないにしてもまさかやらないでしょうから、何かしらの関係があったとは思うのですが・・・。

ただセントラル教育がソフトを発売していたのは1984年の途中あたりまでのようですので、何らかの事情でセントラル教育がなくなってしまい、販売権がスターパックに移行されたとも考えられます。それにしては、なぜこの2作なのかという疑問が残りますが・・・。

そもそもスターパックというソフトハウスは、当時はもちろん、調査を続ける中でも、全く目にしたことがありませんでした。TOPIC 01でも書いたように、ある方から情報をいただいて存在が判明したのですが、雑誌をはじめとした各種資料で一度も名前を見なかったというのは稀有なケースです。

またスターパックの残るもう1作品、「ストレンジハウス」はどこから来たソフトなのかも興味が募るところです。プアなグラフィックスのアドヴェンチャーゲームで、パッケージの絵はマイクロキャビンの「ミステリーハウス」にソックリという非常に妖しいソフトですが、このソフトについては同一作品が他社から出ていたという事実は今のところ確認されていません。これだけはオリジナルなのでしょうか?

とにかくこのスターパックというソフトハウスは謎だらけという感じです。

さらにどうやらセントラル教育からは、「みゆきthe勝負師」、「パニックtheトレイン」といったパックスソフトニカのソフトのMSX版が発売されていたようなのです。こうなると話がややこしくなって、もうわけがわかりません。

コンピュータビジョンデービーソフト

コンピュータビジョンもほとんど知られていないソフトハウスですが、『マイコンBASICマガジン』の広告でパズルゲームを3作出していたのがわかりました。ところがこの顔触れを見ると、デービーソフトの「パラドックス」に含まれる4つのパズルゲームのうちの3つと全く同じだったのです。デービーソフトのほうの各ゲームのタイトル画面を見ると『Copyright (C) '83 Computer Vision』とありますので、同一の作品であることはもちろん、きちんとコンピュータビジョンの了解があった上でデービーソフトのほうから再発売したのだということがわかります。

しかし、なぜいったん発売されたソフトを再発売したのかは不明です。ただこの両社は、ともに北海道のソフトハウスだという接点があります。おそらくほとんど地元だけで埋もれていたこの作品にデービーソフトが目を付け、悪い出来ではなかったので自社から改めて発売した・・・という感じではないでしょうか。

ところで「パラドックス」には4作が収録されていますが、コンピュータビジョンの広告に載っていたのは3作のみです。残りの1作の「SUR FACE」は広告掲載のあとに発売されたか、デービーソフトから再発売される際に新たに作って加えたかのいずれかだと思いますが、いまのところ決め手となる資料は見つかっていません。

チャンピオンソフト←?→ハドソンソフト

これまで取り上げたケースは、少なくとも片方はほとんど無名のソフトハウスが絡んでいましたが、名の知れたソフトハウス同士でも同様のケースがありました。チャンピオンソフトの「ザ・サクセスマン」とハドソンソフトの「出世ゲーム」がそれです。「出世ゲーム」のほうはFM-7版は発売されていないのですが、画面写真を見る限り、同一のものであるのは間違いありません。「ザ・サクセスマン」はFM-7のほかにPC-8001mkII、MZ-2000、X1で発売、「出世ゲーム」はPC-8801版以外は確認できていません。

「なぜこの両社から同一ゲームが?」というのはもちろん、どちらがオリジナルなのかもわかっていません。「PC88ゲームライブラリ」によると「出世ゲーム」の発売は1983年4月ということでずか、「ザ・サクセスマン」もほぼ同時期だと思われるのです。作者の白木善喜氏はチャンピオンソフトのスタッフなので「ザ・サクセスマン」がオリジナルとも考えられますが、なぜハドソンから同一作品が出たのかが明らかにならない限り、それも確定できないでしょう。

データウエストポニカ

データウエストのピンボールゲーム、「電視娯樂彈球儿」とポニカの「ボールパニカー」も同一の作品です。「ボールパニカー」はもともとPC-8801用のピンボールゲームとして1984年にポニカから発売され、そこそこ売れたと記憶しています。「電視娯樂彈球儿」はFM-7用のピンボールゲームとして1985年にデータウエストから発売。「中華風ピンボール」というユニークな作品でした。

この「電視娯樂彈球儿」とほぼ同時期にポニカからFM-7用の「ボールパニカー」が発売されました。ところがこれはPC-8801版の移植ではなく、他社のソフトである「電視娯樂彈球儿」とほぼ同一のものといっていいゲームだったのです。カラーリングや背景は変えられていますが、盤面のパーツは全く同じ。また同一作品である証拠に、「ボールパニカー」のパッケージに『BY DATA WEST』、広告には『コンピュータデザイン/データウエスト』と記してあります。

ボールパニカー

なぜこのようなことが起こったのでしょう?データウエストはいくつかのソフトを他社にOEM供給していたようなのでポニカから出ても不思議はありませんし、ポニカ側は、ある程度のネームヴァリューがある「ボールパニカー」の名称を使うのもわかります。ですが、「電視娯樂彈球儿」とほぼ同時に発売した理由がわかりません。ユーザーの混乱を招くのは必至だと思われますが。

ただ「ボールパニカー」のPC-8801版(右画像)とFM-7版を比較してみると、別のピンボールゲームではあるのですが、各パーツの配置がよく似ているのがわかります。ということは、88版「ボールパニカー」と「電視娯樂彈球儿」には何か関連があるのでしょうか・・・?

結局これも、明確な理由はわからないままです。

パックスソフトニカエムアイエー

パックスソフトニカから発売されたシミュレーションゲーム、「エンタープライズ」が、後にエムアイエーからも発売されたようです。ただし上記の例と同じく、これも“移籍”の理由はわかりません。エムアイエー版発売時にはパックスソフトニカはまだ健在でしたので、倒産などの理由は考えられませんし・・・。2社から同一作品の発売という異例ともいえる事態だけに表に出せない理由があるのかもしれませんが、今となっては謎が残っただけです。

飯島システムサービス←?→ヨシムラ

SF双六
▲FM-7版
大宇宙双六遊戯御家族向
▲MZ版

「Retro & Blues」さんで紹介されている「大宇宙双六遊戯御家族向」というソフトが、飯島システムサービスの「SF双六」と瓜二つであることがわかりました。MZ-80B用(?)のためカラー画面ではありませんが、その点以外は見た目はほとんど同じ。同一の作品であると判断してよいでしょう。

MZ版のほうは、製造元がワンライト、発売元がヨシムラとなっており、FM版とは異なっています。いずれも、これまで目にしたことのない会社名であり、超マイナー作品であることも合わせて、詳細は全く不明です。


公開日:
2003年09月16日
更新日:
2008年10月13日