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#06 魔の[5]キー

FM-7がPC-8801、X1と“御三家”を形成していた頃、FM-7は他の2機種に比べてアクションゲームに弱いといわれていました。それは作り手からすると、デュアルCPUという構成を持ち、V-RAMを直接アクセスできないというハードウェアの制約が大きかったと思いますが、遊び手からすると、なんといってもFM特有のキーボードの癖から来る操作のしにくさに尽きるでしょう。『FM-7のアクションゲームは、キーボードから指を離してもキャラクターが止まらずに動き続ける。だから操作しづらい。』と、散々いわれてきました。

FM-7では、キーボードから入力されたキーのコードがメインシステムの$FD01(サブシステムの$D401)にセットされますが、新たにキーを押さない限り、キーを離しても以前のコードが残ったままになります。たとえば[4]を押してキャラクターを左に動かすと、他のキーを押さない限り[4]のコードがセットされたままになり、キーを離しても左に動き続けるというわけです。

そのためキャラクターを止めるには、別のキーをわざわざ押さなければならない必要に迫られます。そのためのキーは別になんでも構わないのですが、キャラクターの移動は多くの場合、テンキーの[8][2][4][6]で行なわれましたから、動きを止めるにはその中心にある[5]のキーが最も都合がいいだろうということになります。制止用キーは人によって様々だったかもしれませんが、ほとんどの人は[5]で止めていたはずです。

FMのキーボードがなぜこのような仕様になったのかは定かではありませんが、『Oh!FM』1985年1月号の「開発担当者直撃インタビュー」によると、FM-8もFM-7もゲーム用途を意図していなかったということなので、特に問題にしなかったのでしょう(FM-7のデモを見るとゲーム画面も入っているのですが・・・)。しかし意に反してゲームは大量にリリースされ、多くのFMユーザーを苦しめることになりました。

この問題は確かにプレイヤーを戸惑わせますが、これがいいほうに作用することもありました。キーを離してもキャラクターが動き続けるということは、逆にいうとキーを押さなくてもキャラクターを動かし続けられるということです。キャラクター画面の端から端まで移動させるときなど、一度ポンと押すだけで勝手に動いてくれるのですから楽であるともいえます。

また、たとえば「ニュートロン」は通路の設定がわりとシビアに作られていますが、曲がり角に差しかかる前に曲がりたい方向のキーを押しておけばスムーズに曲がることができ、とてもプレイしやすくなっています。

結局これは慣れでしょう。このキーボードに慣れてしまえば、さほど苦にはなりません。逆に他機種のゲームがひどくプレイしにくくなることもあります。当初は苦労するかもしれませんが、いずれは「[5]を押せば止まるのだから押せばよい」という程度になります。

キーコードが残ったままになるというこの問題より、むしろ「複数のキーを同時に入力できない」という問題のほうが大きかったと思います。たとえばキャラクターを斜めに移動させる場合、他機種では[4]と[8]を同時に押せば左上に移動させることもできましたが(X1は不可?)、FMでは1つのキーしか受け付けないため、左上に動かすには[7]を押す必要がありました。

それでも、これくらいならやはり慣れで乗り切れてしまいますが、キャラクターを動かしながら他の動作をするとなると、とたんに辛くなります。シューティングゲームでミサイル発射がスペースキーに割り当てられている場合、敵の攻撃をよけつつ自機を動かしても、スペースキーを押してミサイルを発射すると同時に自機が止まってしまうことになります。再び移動させるにはテンキーを押しなおさなければならず、自機が止まるこの瞬間は、シューティングゲームでは致命的な間となります。

また、「ビクトリアスナイン」ではテンキーでコースを指定してスペースキーで打つようになっていましたが、同時入力を受け付けないこの問題からか、スペースキーを押してもバットを振ってくれないことが多々あり、非常に悩まされました。[5]を押せば止まるという最初の問題と違って、こちらはどうすることもできないのでより深刻です。

しかし、この制約には抜け道がありました。[BREAK]キーだけは他のキーとは独立しており、この制約を受けないのです。そのためミサイル発射を[BREAK]に割り当てれば、自機を移動させながら撃つことも可能となります。しかもBREAKキーは、押されているか押されていないかの情報も読み取れるため、一度押しただけでミサイルが撃ちっ放しになるようなこともありません。

というわけで、FM-7のアクションゲームでは右手をテンキー、左手をBREAKキーに乗せるというスタイルが一般的になりました。サブシステムのアクセスの問題もプログラミングテクニックの向上などによって克服され、高速ゲームを作ることが可能になりました。「アクションゲームに弱い」といわれたFM-7にも数々のアクションゲームがもたらされるようになったのです。

キーボードの問題は、FM77AVで完全に解消されました。キーを離した情報も送られるようになりましたし、複数キーの同時入力も読み取れるようになりました。しかしFM-7で身についた癖はなかなか抜けず、BREAKキーを使わずにスペースキーで攻撃するというのはとても違和感がありましたし、[5]を押さなくても止まるのに、つい[5]を押してしまったりもしました。キーを離しただけでは止まるはずないと思い込んでいるので、[5]を押さずにはいられなくなっていたのです。この癖は未だに抜け切っていません。

結局、ゲームは慣れた環境が最も遊びやすいということでしょうか。

※今回のトピックは、INKさんからいただいたヒントをもとにして書きました。ありがとうございました。3年経って、ようやく形にできました(^^;


公開日:
2004年02月24日
更新日:
2007年06月21日