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#07 アダルトソフトの起源を探る

「パソコンゲーム はじめて物語」のほうではアダルトソフトの起源については取り上げませんでしたので、ここで改めてまとめてみることにします。

今のところ、アダルトソフトの第1号は「ナイトライフ」(光栄)という見解が一般的のようです。ですが、それを覆すような資料がいくつか存在しますので、その定説に一石を投じてみたいと思います。もっとも、確証のある話ではありませんので、小石程度のものかもしれませんが……。

ASCII EXPRESS 1982年9月号
▲『月刊アスキー』1982年9月号より

Wikipediaによると、「ナイトライフ」のオリジナル版であるPC-8001版が発売されたのは、1982年4月のこととされています。これ以前にアダルトソフトが発売された形跡がないということから、これがルーツであると認定されているのだと思います。しかし実際には、それ以前の存在を示すような資料がないわけではありません。

たとえば、『月刊アスキー』1982年9月号の「ASCII EXPRESS」。この中に「"18才未満おことわり"のアダルトソフト」と題されたアダルトソフトについての記事があり、主にapple II用のアダルトソフトを紹介しているのですが、そこにこんな記述があります。

日本にもたしかに、「SEX」に関わるソフトはある。どの機種用だったか不詳だが、"HAPPY PLAN"という家族計画用のものがあった。

「ナイトライフ」を連想させもする内容のようですが、これもゲームではないものの、れっきとしたアダルトソフトのようです。ただこの記事でわかるのはタイトルだけで、発売元も機種名も判明しません。本当に発売されていたのか怪しくも感じてしまいますが、「あった」と断定していますので、おそらく出ていたのでしょう。

この記事の掲載誌が発売されたのが1982年8月。すでに過去のソフトのような書かれかたをしていることから、発売されたのはたぶん1982年以前、遅くても1982年の春頃までだと考えられます。となると「ナイトライフ」より早い可能性が高く、「ナイトライフ元祖説」が崩れることになります。しかし私自身もこの記事以外ではまったく見聞きしたことがないソフトですので、その存在がはっきり証明されない限り、元祖認定は行なえないでしょう。

この「HAPPY PLAN」がFM-8だったら、FMシリーズのアダルトソフトの第1号となる可能性も出てくるわけですが、現状では「野球拳」(九十九電機)、「ロリータ」(PSK)、「セーラー服と野球拳」(CSKソフトウェアプロダクツ)あたりのいずれかであると考えられます。

ただし、やはり未確認ながら、それ以前かもしれないアダルトソフトらしきものがあります。

当時富士通では、FMシリーズ用のソフトウェアカタログを発行していました。流通している市販ソフトをジャンル別にまとめたもので、数か月ごとに新版を発行していたようです。

ソフトウェアカタログ

これのVOL.2(1982年11月現在)の「ホビーゲームソフトウェア」のカテゴリー中に、「セクシーグラフィックゲーム」というソフトを見ることができます。ただしこのカタログは画面写真もゲームジャンルも記載されておらず、アダルトソフトとは断定できないのが弱点となります。ですが、アダルトソフトを思わせるタイトルなのは賛同していただけると思います。

カタログに示されているデータは(右画像参照)、まずタイトル、その右の「T」は記録媒体(T=テープ)、その右は価格、そして右端の数字は発売元を示しています。このカタログは、巻末に「ソフトウェア提供会社リスト」がまとめられており、そこでふられた番号を参照して発売元を確認するという形になっています。たとえば6はアドコム電子、43はメディア札幌(=ハドソンソフト)となっているのですが、では「セクシーグラフィックゲーム」の41はどこかと見ると、なんと41だけがリストから抜けているではありませんか。なぜここだけ漏れているのか、理由はまったくわかりません。発売元がわかれば、なんらかの手掛かりがつかめたかもしれないのですが……。

ソフトウェアカタログ会社リスト

ひとつわかるのは、この会社リストは50音順になっていますので、社名が、40番のマイクロテクノロジー研究所と42番のマイコンセンターウエノのあいだ、つまり「マイク」、「マイケ」、「マイコ」のいずれかから始まることは確かなようです。おそらく「マイクロ」か「マイコン」のどちらかの可能性が高いでしょう。

そして、このカタログ中に発売元が41番となっているソフトがほかにないかと探すと、「自動車販売修理業向顧客管理」と「競輪の車券予想」の2点のソフトが該当しました。前者は実務用の顧客管理ソフトですが、後者は競輪の予想ソフトのようです。競馬の予想ソフトは多いですが、競輪を対象としたものは非常に珍しく(FMではたぶんこれ1作のみ)、ますます興味をそそられます。

しかし、得られるデータはこれだけです。次の1983年5月のカタログでは、なんとこの3作とも姿を消してしまっているのです(1982年6月のVol.1にも載っていません)。「HAPPY PLAN」同様、あまりにも不明な点が多く、結局「セクシーグラフィックゲーム」が本当に発売されていたのかははっきりしません。ですがカタログに記載されてはいますので、FMシリーズのアダルトソフト1号の候補にはノミネートできるかもしれません。

MZ-700版「野球拳」
▲MZ-700版「野球拳」

と、ここまでは手持ちの資料から導き出せたのですが、ほぼ確実に「ナイトライフ」以前に発売されていたアダルトソフトがあったことをM_tさんのブログ、「TAPE-LOAD」で知ることができました。それによると、1981年3月20日発行の書籍に、MZ-80K/C用の「野球拳」(ハドソンソフト)の広告があるそうです。1981年となると間違いなく「ナイトライフ」に先行しますので、「HAPPY PLAN」の件はあるにしても、これがアダルトソフトの元祖と認定してよさそうです。発売元はハドソンで怪しげなソフトハウスではありませんし、ハドソンは後に他機種用にも「野球拳」を出していますので、実際に発売されていたと考えてよいでしょう。

MZ-80K/C用ということで、画面はキャラクターグラフィックスで描かれた、後のMZ-700版と同等程度のものでしょうが、野球拳を題材としている点からも、立派なアダルトソフトといえるでしょう。PC-8001の「ナイトライフ」もマッチ棒のようなグラフィックスだったらしいですから、グラフィックスの優劣は問題にならないと思います。

それにしても、このソフトが今までほとんど話題にもならず、「ナイトライフ」が元祖として扱われてきたのは不思議といえば不思議です。販売数が少なかったにしても、発売元がハドソンなら埋もれてしまうことはないと思うのですが……。

<追記>

その後、「セクシーグラフィックゲーム」の発売元が判明しました。マイコンショップMOZZというところで、やはり「マイコン」から始まっていました。1982年9月のソフトカタログに記載されており、ほかにアダルトソフトとおぼしきものは見当たらないため、FMシリーズのアダルトソフト1号の有力候補なのは変わりません。アダルトソフトであるなら、ですが……。


公開日:
2008年12月30日
更新日:
2011年06月26日